2. 襲いかかる風、雨

不景気でモノが売れなければ半導体も当然売れない。新規案件の開発はすっかりなくなってしまった。手のひらを返したようにすっかり案件はなくなってしまった。全国的ないのです。特に九州は少ない。しばらくは社内でスキルアップと称して半導体設計業務の見直しや振り返りやっていた。

派遣や構内請負をしていたメンバが徐々に契約を切られたり、単価の引き下げを提示されて契約拒否して福岡営業所に戻ってきた。私はときおり以前の仕事の繋がりから頂いた単発の仕事をこなしていたが基本暇だった。ちょうどこのあたりに娘が生まれた。私生活的には仕事が忙しくないときだったので好都合だった。

そしてメンバのひとりがヒッソリと転職。社内に不穏な空気が流れる中、本社から人事部長が「直接」福岡のメンバに話があるといって来福してきた。日本海外を含めた今日の半導体業界の実情、九州の実情、九州部隊の貢献度等つらつら喋った挙句「福岡営業所は畳みます」と言い放った。

…まあね、それは仕方ないよ。業績が悪化していて、九州は貢献度が低く、来季は大変なので畳む。話はわかった。しかしね、「今3月ですが、4月で閉鎖します。つきましては会社を退職するか、本社のある中部地方の転勤のどちらかです。1週間で決めて下さい」て。考えられない会社の要求に唖然。

「なおこの指示は法令上問題ないことを確認しております」と。あのな、法令上だかホウレン草だか知らんが、生活が大きく変る決断を短期間でやれとか心情的に物理的に無理っだってことがわからんのか? というかわかっててやっているのだろうけれど、これはない、と思った。畳む判断はもっと前にもできたはず。

経営判断をギリギリまで先延ばしにして社員に迷惑かけるとかどんだけだよ! 出産したばかりで精神的に不安定な嫁に話すと、「転職先なんてすぐ見つかるわけないんだからとにかく中部地方へいくしかないでしょ! てか、こんなことになるって働いていたらわかるよね? なにやってたの」と。

そりゃ原理的には仕事が無い状況だった=転職準備ってのもあったかもしれんが、人生に対してのセーフティネットをどんだけ重ねて準備しろっておっしゃるのかしらと思った。嫁の発言は常に後出しジャンケンで勝利確定側に立って発言するので非常に疲れる。まあね、女性はこんなもんだ。

ま、女性に限らないけれどね。で、私は会社をやめてそうだなぁ、半導体業界はもういいから社内でWeb関連の業務もやっていたからそっちの世界かあるいは景気に左右されない葬儀関連に転職しようかと思って軽く調べてみたが、Webは経験者かつ若い人間、葬儀は嫁の猛烈な反対により断念した。

だいたい営業所閉鎖にひと月もない状況、そして大不況のさなかすぐ仕事が決まるわけもなく、結局嫁の強い意向で中部地方へ転勤、引越しすることとなった。「もうちょっとしっかりしていると思ったんだけどな」とは、会社にいったのか私への皮肉なのか、あるいはその両方なのか。