1. 嵐の前触れ

今思えば2007年のサブプライムローン問題が2008年9月15日のリーマン・ショックを引き起こしアメリカ経済に対する不安が決定的となった結果、海を隔てて東の島国の経済までもおかしなことなったわけで、よくもまあ酷いことしてくれやがったな、という思いが募ります。

2008年の9月、私は中部地方のある半導体メーカへ単身赴任していた。嫁の妊娠が発覚したGW明けからかれこれ5ヶ月、一緒に赴任していた後輩は3ヶ月の約束だったので福岡からのメンバは私1人なっていた。業務も切迫していたこともありリーマン・ショックのニュースを見ても気を止めなかった。

そもそも半導体業界は浮き沈みが激しく、周期的な需給変動を繰り返す特徴がある。2008年は比較的需要が高く、中規模の回路設計会社に所属して私もその恩恵を受けていたといえよう。残業代を考えると、結構な額を貰っていたと思う。世の中の動向を気にするより終わらない仕事のことを考えてた。

社内でも業務契約の更新や案件についての減少は見られず、リーマン・ショックの影響は2008年末でも特に感じなかった。個人的には需要案件の多い大企業と一緒に仕事をしていたから余計に景気の後退の予兆を感じるのが遅れたようだ。元来楽天的な性格だったことも大いに関係していると思うけれど。

年が明け2009年1月、携わっていたプロジェクトも終盤に差し掛かり担当の業務も見通しがついたので福岡へ戻ってきた。次の案件が福岡にある、という報告を受けかつ上長もゴーサインを出したので戻ってきたんだけれど、フタを開けるとその業務は凍結、その他上がっていた案件も軒並み凍結。

年明けから雲行きが怪しくなってきた。線表に予定されていた案件が次々と「凍結」「延期」「中止」と宣言された。サブプライムローン問題から端を発し世界を駆け巡った不景気の波が本格的に半導体業界に吹き荒れようとしていた。